新型コロナウイルスと高血圧と降圧薬
新型コロナウイルスと高血圧
新型コロナウイルスに関して、高血圧がリスクであるという事は言われてきました。
なぜなら、新型コロナウイルスは、ACE2というレセプターを細胞へ侵入する際の入口とし、ターゲット細胞へ感染するからです。ACE2というレセプターは、細胞に存在し、血圧や循環の調整に関係しています。このACE2という単語は高血圧のお薬を飲んでいる方は、もしかしたら聞いたことがあるかもしれません。後で、新型コロナウイルスと降圧薬に関してもご説明します。
結論から申し上げますと、下記の2点です。
①高血圧は、新型コロナウイルスが重症化するリスク因子ではある。
②しかし、重症化のリスクは高血圧そのものよりも、高血圧に関連した血管内皮障害や臓器障害などによる可能性が高い
下記は、新型コロナウイルスの重症化のリスク因子です。最近は男性であることや、肥満も追加されているデータも多いです。
ARBやACE阻害薬は新型コロナウイルス感染症に影響を及ぼすのか?
新型コロナウイルスがACE2を介するという事で、降圧薬のACE阻害薬やARBの服用で感染リスクが上がるのでは?という心配の声があるようです。
しかし、2020年5月1日までに発表された6つの臨床研究では、ARBやACE阻害薬の使用がCOVID-19の感染や重症化のリスクと関連がないとするものや、むしろ良好な予後と関連するという報告があります。リスクを増加させるという報告ありません。
国内外の全ての学会は、ARB/ACE阻害薬の投与は、中断せずに継続することを推奨しています。
自己判断でお薬を中止することはむしろリスクになってしまいます。心配なことがあればいつでもご相談ください。
新型コロナウイルスの重要な因子「血栓症」
他に新型コロナウイルスの重症化・死因について「血栓症」ということが大きくかかわってきているというデータが揃いつつあります。長くなるのでまた別の記事にします。新型コロナウイルスそのものが血栓を形成するというパターンと、サイトカインストームという免疫の暴走で起こるパターンがあると言われています。
新型コロナウイルスによる血栓症というのがわかってきたことで、今までの新型コロナウイルスの不可解な点が少し解明できるような気がします。
血栓が心臓や肺の血管に詰まると心筋梗塞や肺梗塞になり、それにより死亡してしまうことはあります。肺炎がある状態だとさらに死亡率が高くなります。今までの臨床経験で、ウイルス性の肺炎だけで若い人が亡くなったりするというのは、どうも解せないものがありました。また、家庭などで待機しているうちに急激に悪化したり、突然脳症状で倒れる例が目立ってきていたり、孤独死例も増えている。これらも、血栓症あるいは播種性血管内凝固症が理由であれば納得できます。
抗血栓症学会の警鐘・厚労省の診療の手引きでも血栓リスクにかかわる項目が追加され、最近では新型コロナウイルスの軽症者にもDダイマーという血栓に関わる値を判定することを推奨しています。
また、血栓症については今後詳しく書きたいと思います。